地形に沿った大屋根と半地下のお堂

谷戸に立つ寺院の、新しい観音堂の計画。新しい家族像に応じた小規模な法要の場として、敷地内の墓地とともに整備した。目標にしたのは、ランドスケープの修復と親しみのある生活景の創出である。
敷地は元々、緩やかな傾斜地であったが、一部にやや急激な高低差が存在し、周囲との連続性を損なっていた。これを解消し繋ぐように三角形平面の観音堂を配置し、その周りをめぐる緩やかな地形の起伏の中に墓地を配置した。地形に沿う一枚の大屋根は、諸空間を優しく包み込む象徴であると同時に、優しい日陰と心地よい風をもたらす環境装置でもある。相互依存の木架構は、これに温かく力強い信仰の空間性を与えている。
横浜特有の環境単位ともいえる谷戸は、元来生活と自然が調和した場であり、寺院は長らくその核として地域を見守ってきた。観音堂の存在感が力強く温かみのある境内空間を作り出し、地域の拠り所となることを願い進めた計画である。

DETA

  • 所在地:横浜市
  • 用途:寺院
  • 構造:RC造・木造
  • 延床面積:70.73㎡
  • 共同設計:西日本工業大学、神奈川大学、マチデザイン、長谷川明建築設計事務所
  • 構造計画:MID研究所
  • 完成:2017年
  • 撮影:鳥村鋼一*